2012年2月16日木曜日

本日休診  


日曜日三雲医院の八春先生は本日休診の看板を掲げてゆっくり体を休めて寝ようとするが、人気者で評判の良い先生で珍客が到来しドラマは展開していく。先生は患者始め弱い人々の味方になって奮闘努力する人情味溢れるお医者さんでした。「医は仁術である」という中国の言葉を甥子の院長に語る場面があったが、昔の開業している町医者にはそういう先生が数多くいたのだろうと想像するが、今では少なくなっているのだろう。皆サラリーマン化して大学病院の先生や国の病院の先生になっている。そういう意味ではこの映画は懐かしい下町庶民の開業先生の心温まる映画でした。しかし単なる人生教訓映画でなかった。戦争後遺者である三國連太郎扮する勇作が戦争で頭がおかしくなり時々今でも戦争している気持ちでいた。飼っていた小鳥か怪我をすると「少年兵が怪我をした」と先生に診療をお願いに来る始末。最後夕焼け空に雁が列を組んで北に渡っていく姿を勇作隊長の指揮で見送るシーンに、少年兵達か帰還していくと思った勇作の顔にはなんともいえない安堵感がにじみ溢れ出でいました。この作品は反戦映画だと言う人もいて、戦争後の貧しい苦しい時代から皆が一人ひとり立ち直って他人のために生きていくことを見事に描いてくれました。観終わってみて、こんな先生は少ないかもしれないと思うが監督はこの映画にその理想像を描いてくれたのでした。若い淡島千景・岸恵子・角梨枝子の女優はじめ鶴田浩二・佐田啓二・三國連太郎の男優等はまだ駆け出しの頃だったと思うが、その後日本を代表するスターになったのであるから今では考えられない豪華競演の出演者ばかりでした。(1952年)

0 件のコメント:

コメントを投稿