2012年1月9日月曜日

関の弥太っぺ


股旅ものシリーズ作品の金字塔と云われている傑作作品。加藤泰監督の2作品も勿論素晴らしい作品でしたが僕はこの作品が一番好きだ。冒頭花を摘む少女お小夜が激流に流されて溺れるところを助けてやる心優しい弥太郎でした。10年前に生き別れた妹を身請けするために探していた道中での出来事でした。その少女を面倒みる羽目となり博打等で貯めた50両をその少女にくれてやり、亡くなったお母さんの実家沢井屋にお小夜を無事届けるのでした。一方やっと探し求めた妹はすでに死んでしまっており、お墓を立て只号泣するだけでした。そして10年後に縁あって命を助けた少女に一目会いたくて出かける。すっかり女らしく成長していた可愛い箱入り娘になっていました。弥太郎は村の鎮守祭りに落とした風車を手渡してやるのでした。あまりに荒んだ弥太郎の顔でしたので娘は助けてくれた人だとは思わなかった。しかし弥太郎には無くなった妹をだぶらせて只々お小夜が懐かしいのである。このシーンは特に素晴らしいし風車の小道具を使って、弥太郎の想いが風のごとく儚く流れ去っていくのをその風車に表現したのでした。子分箱田の森介の木村功がばくちに凝って娘の家に自分があの時のおじちゃんと云って娘の家に無心するのでした。それを知った弥太郎は見逃してやるからこの町ら出て行けと諭すが恋に狂ったのか娘さんが好きになったと云って云うことを聞かない。云っても駄目ならお前は男でないといって切り倒すのでした。そして裏庭の槿の花が一杯咲き乱れた庭で二人はお別れするのです。「この娑婆には悲しいこと、辛れえことがたくさんある。だが忘れるこった。忘れて日が暮れりゃ明日になる」その言葉でお小夜が最後にやっと記憶を手繰り寄せ、あの時助けてくれた人だと思い起こし後を追ったがもういない。決闘の場に進むところで映画は完の字でした。確か冒頭のシーンも槿(花言葉信念)の花で、最後も槿の花でした。山下監督はよく花を好んで用いる。この映画のラスト決斗に向かう場面に彼岸花(花言葉死人花)が咲いていた。そしてその後緋牡丹のお竜さんの名作を誕生させてくれるが、この作品が原点になっていると思われる。

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