2011年12月5日月曜日

人情紙風船

 昭和12年 監督山中貞雄  稀世の天才と謳われた山中貞雄のわずか3作品のひとつの代表的作品を見ました。なんとなくこの作品の底辺にには、いつの時代も人間と人間との関係は紙風船のごとくはかないものであるという厭世観・無常観が 漂っていたと考えさせられる作品でした。映画の始まりは長屋の首吊り浪人で終わりは浪人海野の妻の自殺でした。死から死で終わる。しかし単なる暗い映画ではなく、長屋の一人一人は生きることへのエネルギッシュが満ち溢れていていました。その代表が髪結新三でした。彼は意地を貫き通そうとする気風の良い男でした。長屋の家主も人の良い人でした。そんな中に仕官を求めて昔父にお世話になった代官に職をお願いする海野浪人夫婦がいました。人の情けにすがろうとしてはいけないし所詮人間は一人であるという想いを監督は見事に描いてくれました。最後の長屋のどぶ溝に落ち流れてゆく紙風船にこの映画のすべてが凝縮しているような気がしてならない。

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